原作VS映画「ぼぎわんが、来る。」
どうも。
大ヒット小説とか漫画の映像化作品の、ボロクソ低評価問題によく直面するひとです。
今更感半端ないんだけど、IWGPのアニメ版の1話だけ無料で見れたのさ。
‥‥地獄を見た。
原作最高だし、昔のドラマも最高だったのに、アニメ化どうした?!評価つけるとしたら、☆ひとつも付けたくないレベル。とてつもなく残念。
Rotten Tomatoesとかですごい好評になるのも多いけど、ボロボロなのも、ほんとにねぇ。
そんなこんなで(?)今回は、原作の比嘉姉妹シリーズのファンの私が、「来る」の感想とかを書いていきます。
【目次】
「来る」
2018年に公開された、日本のホラー映画。
監督・脚本は中島哲也。
原作は澤村伊智のホラー小説「ぼぎわんが、来る」。
【登場人物】
・野崎:岡田准一
オカルトライターの男性。口が悪く、粗暴な態度を取ることが多い。真琴と付き合っている。田原から相談を受け、怪異の解決のために奔走する事になる。
・比嘉真琴:小松菜奈
髪をピンク色に染めている派手な女性。霊能力者だが、普段はキャバクラで働いている。凄腕の霊能力者である姉の琴子を尊敬している。子供を産めない体だが、子供が大好きで、知紗のことを気に掛ける。
・田原秀樹:妻夫木聡
会社や周囲ではイクメンで通っている、サラリーマンの男性。周囲で怪奇現象が起こるようになり、野崎に助けを求めることになる。
・田原香奈:黒木華
田原の妻で、知紗の母。大人しい性格の女性。育った環境や母親との関係があまり良くなく、それを気にし続けている。
・津田:青木崇高
田原の学生時代の友人。関西弁が特徴的。大学で民俗学を教えていて、肩書は准教授。野崎の元カノの知り合いで、野崎とも親交がある。なお、小説では「唐草大悟」という名前。
・比嘉琴子:松たか子
真琴の姉で、警察上層部につながりを持つ、ユタの家系に生まれた日本最強の霊能力者。顔や体に傷痕がある。
【あらすじ】
田原秀樹は、妻・香奈との間に一人娘の知紗が産まれ、幸せの絶頂にいた。しかし田原への来客の対応をした同僚が謎の大怪我をした事をきっかけに、周囲で怪奇現象が起こるようになる。
不安になった田原は、学生時代の友人の津田に相談をすると、オカルトライターの野崎という男を紹介される。
野崎は、霊能力を持つキャバ嬢の真琴と田原を引き合わせるが、真琴の対応に腹を立てた田原は出ていってしまう。
しかし、野崎と真琴は田原家に出入りするようになり、真琴が怪現象を抑えるために力を使った事で、状況はより悪化していく。
田原は家族を守るために奔走するが……
【感想やら考察やら】
大ヒット小説・漫画の映像化作品って、やたらと不評なのが多いよね。そうなる理由って、原作を読んだ人それぞれの世界観と、映像化された世界観のズレが大きいからだと思う。
原作と映画は別物。ベースが同じだけの別のものって思えば、そこまで悪い作品ってそんなに無い、はず。少なくとも、私は原作がある映画を見る場合、別モノとして見てる。原作の骨組みだけ残っていれば文句は言わない派、とでもいうのだろうか。
で、「ぼぎわんが、来る」という小説が原作の「来る」なんですけどね、骨組み消えてた。原作じゃなくて、原案。そんな感じ。
エンタメホラー映画としてはそこそこ
映画としてはそこそこ面白かった。
「ぼぎわんが、来る」を原案とした映画として見ると、そこそこ面白い。
ラストはもう、最初は開いた口が塞がらない状態だったんだけど。これホラー?何を見せられてるの?って呆れかえったんだけどね。
よく見ると、田原がベンチに座って「知紗はどんな夢を見てるのかな」ってブログに書いてるシーンがあるのよ。
そしてラストで、知紗はベンチで眠って夢を見てるのよ。
これは田原に対するアンサー的なシーンだよね。
ただね、香奈が半狂乱になりながら「悪い夢から覚めたら私じゃない生き物に変わっていた」って、心の中で言うシーンがあるのよ。
これってさ、夢から覚めたら……つまり野崎たちが選択を間違えたらっていう……?
小説では、第一章は田原視点、第二章は香奈視点、第三章は野崎視点で、登場人物の周囲から見た感じとか評価とかが全部ひっくり返る面白さがあるんだけど。ぼぎわんの正体も、怪異+人間の怖さみたいなものだし、ミステリ要素も詰まってて面白いのよ。
映画版もヒトコワ要素はあるんだけど、クライマックスの壮大なお祓いシーンが見ものだった。ユタのおばぁ集団とか、神職のおじさま集団とか、お坊さんに女子高生に、なんでもありで集まって来る。警察上層部まで一枚噛んでる。
あとは、いかにもバラエティ番組に出てきそうな風貌の霊能力者役の柴田理恵。すっごい、いい味出してた。
割と最初の頃に出てきて、生死不明な感じでストーリー進んでいくんだけど、クライマックスで再登場するのよ。かなり重要な役割で。小説ではほとんど出番ないのに。これ、映像化作品ならではのおいしい役回りじゃん。
原作のお祓いシーンって地味なのに、いや、地味ではないけど力業?だから、エンタメの力ってすげぇって実感させられる。
あと、松たか子のラスボス感が半端ない。
ほんとラスボスなんだけどさ。原作でもラスボスだし、松たか子の演技力も容赦ないし、除霊前に「最近はファ〇リーズも効くらしい」っていう原作の台詞も再現されてて感動のあまり泣いたけどさ。泣いてはいないわ。
そして「効く設定でいいんかい」ってツッコミ入れたけどさ。心の中でだけね。
最後に、真琴と別れる時の微妙な表情の変化とか、大女優かと思った。
いや、実際に大女優さんだけどね。
で、お祓いの最後に、琴子が野崎と真琴を見逃したのは、いろんなものを守る決意が見えたからなんだろうね。
あの脱力系の夢を見ているうちは大丈夫なんだろうなぁ。
見なくなったら、あの子はバケモノになるんだと思う。
ぼぎわんは来なかった
あと、結局は映画に出てくる怪異は「ぼぎわん」じゃなくて、全く違う怪異なんだろうね。作中、怪異のことを「あれ」とは言うけど「ぼぎわん」とは言わないし。
田原家の過去に触れてないし、田原の祖父の返事の件も完全スルーだし、どうやっても田原家に関係してる「ぼぎわん」にはなれてない。
そして、田原が子供の頃に行方不明になった、赤いスニーカーに白いワンピースの少女「ちさ」がやたらと出てくる。これ、「ぼぎわん」じゃなくて「ちさ」が原因の怪異っぽい。それか「ちさ」も怪異に呑まれたひとり。そんな感じ。どっちも虐待されてたっぽいし。
「ぼぎわん」の正体をもっとちゃんと描いて!!最終的に、お山に誘う異界の何かよくわからんバケモノになってるけど、虫を仲介してやってくるバケモノになってるけど。
原作の「ぼぎわん」を無視しないでくれーーー!!
ほんと、それだけが残念というか、あからさまな原作無視というか。
比嘉姉妹シリーズファンとしては許せません。
「ぼぎわん」っていう言葉の響きと、呼んだから来たっていう根本的な理由、まるでAIみたいに学習していくっていう設定が面白いのに、そこ無視しちゃう?っていう。
野崎に子供ができた過去があるっていう設定とかキャラ改編とか、香奈の唐草の関係とか、香奈の生死が原作と違うのは許容範囲内として。
ぼぎわんの設定だけは変えちゃいけないだろ!!
そうそう、田原と野崎を引き合わせる民俗学准教授の唐草の名前が、映画では津田になってたのはなんでだろう?なんか、映像作品としては使うのNGだったとか?
上映前に、友人から予告編おすすめされてたし、実際に予告編見て面白そうだったし、中島監督の「下妻物語」とか好きだし、原作も読んでて、事前情報も期待値もマックスだったからこそ残念な映画でしたとさ。
ただ、松たか子の琴子役は完全にハマってた。
原作読んでると、脳内で琴子が松たか子に自動変換されるくらいにハマり役。
あ、原作の比嘉姉妹シリーズは最高です。そっちは全力でおすすめできる、したい。
琴子ちゃんが活躍する「ししりばの家」も面白かった。
「ずうのめ人形」も「リング」意識しまくってて最高。三津田信三が解説書いてるのとか、嬉し泣きしそうになったわ。
最新作の「ぜんしゅの聲」には、「ぼぎわんが、来る」のアンサー的短編小説「鏡」が載ってるらしいから、近々読む予定です。
リンクも貼っておく!
まぁアマプラで無料だし、松たか子の圧がものすごい最強霊能力者っぷりとか、妻夫木聡演じるイクメンパパ田原のクズっぷりを見たい方はどうぞ。
原作ファンには……あんまりおすすめできない、かも。